三笘薫が戻れば、ブライトンの左は元通りになるのか。そう簡単には言えなくなってきた。
クラブの今季の背番号発表[1]では、三笘は7番だ。その姿でどんなプレーを見せるのか、楽しみにしている。けれど、復帰を待つ気持ちだけで、今いる選手の仕事を脇へ置くこともできない。
三笘の話だけをしていたら、見逃すものがある。不在の間、ブライトンの左サイドは空席のままではなかった。
復帰を待つ間にも、チームは進む
5月、三笘はハムストリングを手術した。クラブは手術の成功とリハビリ開始を発表[2]した。復帰後の先発や移籍を、名前だけで確定した話として扱いたくはない。
その間に仕事を積み上げた選手がいる。デ・カイペルだ。
「代役」の二文字では済まなくなった
マキシム・デ・カイペルは、三笘不在の間に結果を残した。そこで何をしたかを見ずに、三笘の復帰後の左を考えることはできない。
アストン・ビラ戦のクラブ記事[3]では、デ・カイペルが前半の得点に関わったことが記されている。リーズ戦[4]では、彼のコーナーキックが同点ゴールにつながった。マンチェスター・ユナイテッド戦[5]では逆転の決勝点。さらにブライトンは、9月19日にアーセナルを3対0で倒した[6]。そんなチームで結果に関わってきた選手を、一時的な穴埋めと呼ぶのは無理がある。
しかも、得点の形が一つではない。リーズ戦では左足のインスイングのコーナーキックで、ファーサイドのヴシュコヴィッチに合わせた。ユナイテッド戦では、右から入ってきたボールに対して自分がゴール前へ入り、最後は6ヤード付近で押し込んだ。外から蹴れるだけではなく、中にも入れる。相手からすれば、左に置いておくと面倒な選手になっている。
だから、三笘が復帰するまでの「代役」という言い方に引っかかる。代役という言葉には、本人が戻れば元通り、という響きがある。でも、この数週間のデ・カイペルは自分の仕事で試合の結果を動かした。前任者が戻ったから出番を返せと言うには、積み上げたものが具体的すぎる。
三笘の時計が止まっている間、チームの時計は止まらなかった。
三笘が戻れば当然先発、と言い切りたくなる気持ちはある。でも、そう言うたびに、デ・カイペルが得点に関わってきた試合を思い出す。リーズで同点を呼んだキックも、ユナイテッドでの逆転弾も。与えられた時間に自分の仕事で勝利に関わった選手を、三笘が帰ってきた途端に脇へ置けるのか。置けないだろう。
だからといって、三笘を古い序列にしがみつく選手のように語るのも違う。二人を雑に並べて「今はどっちが上」と言い切った瞬間、どちらの良さも見えなくなる。デ・カイペルの左足から出るボールが必要な時間と、三笘に一対一で仕掛けてほしい時間は、同じ試合の中にもあり得る。
「デ・カイペルを後ろに下げれば全部解決」も、口で言うほど簡単ではない。彼をどこで使い、誰と組ませ、そのとき左サイドの攻撃と守備をどうつなぐか。監督には、名前だけでなく配置を決める仕事がある。ここを考え始めると、単なる退団騒ぎよりずっと面白い。
先発の左ウイング欄には一人の名前しか入らない。でも試合は、左ウイング一人だけで作るものではない。三笘が高い位置で相手を引きつけたら、デ・カイペルの左足をどこで使うのか。デ・カイペルが先に左で仕掛けたら、三笘の得意なスペースは残るのか。共存できるという結論を先に決める必要はない。少なくとも、二人が同じ場所に立てないから片方は退団、というほど単純な話でもない。
4月、あのボレーは月間ベストゴールになった
三笘を過去の人のように扱うのが早すぎる理由は、遠い昔の全盛期を持ち出さなくても足りる。
今年4月のトッテナム戦。三笘はパスカル・グロスのボールに合わせて鮮やかなボレーを決めた。プレミアリーグが選んだ4月の月間ベストゴール[7]だ。三笘にとっては、この賞を取るのが3度目だった。春には、試合の空気を一撃で変える力を見せていた。
その翌月に手術を受けた。これが苦しい。4月のあの一発があるから、またやってくれると思いたい。同時に、あの映像だけで今の身体の状態まで保証することもできない。5か月前に美しいゴールを決めたことと、今すぐ90分間戦えることは別の話だ。
三笘の話になると、左のタッチライン際で相手と向き合い、一歩で外へ出る場面を思い浮かべる。でもトッテナム戦のあの得点では、グロスからファーポストに届いたボールをボレーで仕留めた。三笘の価値を、左で何分走れるかだけで測るのは狭い。どこでボールを受け、どうゴール前に入るか。そこにも見る面白さがある。
もし復帰後、最初は途中出場だったとしても、それだけで「序列が落ちた」「もう終わりだ」と騒ぐ必要があるだろうか。もちろん、毎週ベンチに座ってほしいわけではない。でも、最初の数試合で何分使われるかを、三笘の価値を決める最終判決にしてしまうのは早い。デ・カイペルが左を支え、三笘が途中から相手に違う問題を突きつける。少なくとも、そんな使い方を考える余地はある。
ベンチスタートだったとしても、それだけで慰めを用意する必要はない。限られた時間でどんな仕事をしたかを見る。出場時間の数字だけを、物語の終点にはしたくない。
復帰後に見たいのは、肩書きより最初の選択
次に三笘がピッチへ戻ったとき、最初から先発かどうかは確かに気になる。けれど、それだけを見ていたら肝心なものを見落とす。
左でボールを受けたとき、縦へ行けるか。相手が警戒して二人目を寄せてきたとき、味方とどうつながるか。三笘が入った後、デ・カイペルはどこで生きるか。今のブライトンが勝つために使っている左の強さを、三笘が戻ることでさらに増やせるのか。そこに次の見どころがある。
ここで「どちらが上か」と結論を急ぐより、最初の数プレーを見たい。三笘がボールを受けたとき、デ・カイペルが外を走るのか、それとも中へ入るのか。ボールを失った後、二人がどう戻るのか。今季ここまでの勝ち方を壊さず、そこへ三笘の怖さを足せるなら、ブライトンの左は単なるポジション争い以上の武器になる。ただし、それはまだ実現した話ではない。復帰して、同じピッチに立って、初めて確かめられる。
三笘が不在でも勝てた。だから三笘は不要だと決めるのは雑だ。逆に、戻れば全部元通りだと考えるのも、結果を出している選手への敬意が足りない。どちらのプレーも見たうえで、二人がどう組み合わされるかを楽しみにしたい。
4月には、トッテナムのゴールにあのボレーを突き刺した。5月には手術を受けた。その間に、別の選手が左で結果を積んだ。この三つを一緒に考えると、復帰後の一試合を早く見たくなる。
次に三笘がボールを受ける瞬間、デ・カイペルはどこにいるだろう。相手はどちらを止めに来るだろう。その場面を見る前に、二人の使い方を名前だけで決めたくない。
出典
[1] ブライトン公式:Men’s first team squad numbers confirmed for 2026/27 season(2026年8月20日)
[2] ブライトン公式:Successful surgery for Mitoma(2026年5月25日)
[3] ブライトン公式:Albion v Aston Villa reaction: Fabian Hurzeler delighted with 4-0 win(2026年8月23日)
[4] ブライトン公式:Report: Albion 1 Leeds United 1(2026年9月5日)
[5] ブライトン公式:United 2 Albion 3: 50-year record broken as Albion stun Old Trafford
[6] ブライトン公式:Report: Albion 3 Arsenal 0(2026年9月19日)
[7] プレミアリーグ公式:Mitoma equals record for Guinness Goal of the Month award

