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PKを蹴るのは上田。芝を守りに行った堂安も見てくれ

日本代表

PKスポットに近づく相手を止める。堂安律の仕事としては、ちょっと聞いたことがない。

でも、ベネズエラ戦の最後に彼がやっていたのは、それだった。上田綺世がボールを置く場所へ相手選手が近づき、堂安が割って入る。上田も身体を張る。審判が間に入って、ようやく落ち着いた。そのあと上田が決めて、日本は2-1で勝った。[1][2]

決めた上田は、もちろんすごい。そこに異論はない。ただ、ゴールの瞬間だけを何度も見ていると、助走に入るまでの時間を丸ごと飛ばしてしまう。あのPK、蹴る前からもう勝負が始まっていた。

ほんの少し前まで、ピンチの真ん中にいた

終盤の日本は10人だった。渡辺剛が負傷し、交代枠は残っていない。久保建英が相手のペナルティーエリア内で倒れたあと、ベネズエラの選手も日本のペナルティーエリア内で倒れる。見ている側の気持ちが、右へ左へ忙しい。[1]

そこでVARチェック。オン・フィールド・レビューの結果、先ほどの久保へのファウルが認められ、日本にPKが与えられた。[1]

ここ、映像の展開を知っていてもややこしい。互いのペナルティーエリアで人が倒れ、チェックを経て日本のPKになるのだから。ベネズエラの監督も、試合後に日本のPKという判定には驚いたと話している。[1] 判定に納得がいかない気持ちは、わかる。日本が逆の立場なら、きっとこちらだって大騒ぎする。

でも、判定への抗議と、相手がこれから蹴る芝を荒らしに行くのとは話が違う。

ABEMAの現場記事によれば、ベネズエラの選手がPKスポットを足で蹴り、堂安が詰め寄った。さらに複数の選手がそこへ近づくなか、堂安と上田がスポットを守り、上田が相手を手で押しのける場面もあった。最後は主審が割って入った。[2]

「PKスポットを守る」なんて、妙な言葉だと思う。ゴールを守るならわかる。選手を守るのもわかる。でもここで問題になったのは、芝のほんの一か所。キッカーがボールを置き、軸足を踏み込む場所だ。記事は、芝を荒らしてミスキックを誘う行為だったと伝えている。[2] 大げさに見えて、蹴る人にとっては大げさじゃない。上田がどれだけ強く蹴ろうとしても、足元の状態は上田だけでは守れない。

しかも日本は10人。一人足りないまま、勝ち越し点がようやく目の前に来た。そこで芝を荒らされたら、こちらだって黙っていられるか。気持ちはかなり堂安側に寄る。

親善試合で芝を荒らすなよ、とは思う。そんなことまで競うのか。けれど、この場面を相手への怒りだけで終えるのは惜しい。堂安が動き、上田も引かなかった。そっちにも目が行く。腹が立つのは芝を荒らそうとした行動であって、相手の国籍ではない。

堂安、そっちに走るのか

堂安のプレーといえば、前へ行く姿を思い浮かべる。右から仕掛ける、左足を振る、ゴールに絡む。なのにこの場面で向かった先は、ゴールでもボールでもなく、上田がボールを置く場所だった。

目立つ仕事ではない。得点にもアシストにも、たぶん記録されない。試合後の数字だけを見れば、あの逆転劇は「上田綺世、2ゴール」で終わる。それは正しい。正しいけれど、少し惜しい。

堂安が相手の前に入ったから必ずPKが決まった、とは言えない。上田は自分で蹴り切ったし、結果から誰かの心の中まで逆算するのは雑だ。それでも、キッカーがやるべきこと以外を誰かが引き受けた。その事実は、ちゃんと見ておきたい。

ここで好きなのは、役割を相談している暇がなさそうなところだ。試合の残り時間はわずか。VARチェックの末にPKが決まり、相手は抗議して、こちらは蹴る準備をしなければならない。誰かがボールを持ち、誰かが近づく相手に向かう。PKって、キッカーの名前がアナウンスされた瞬間からその人だけの競技になると思いがちだが、実際にはまだ仲間の仕事が残っていた。

もちろん堂安がなぜ動いたか、頭の中まではわからない。だから「上田を信頼していたから」なんて、きれいな答えを勝手につける気はない。私が惹かれたのは理由の推理より、あの慌ただしい時間に、ボールとは別の場所へ身体を運んだことだ。ゴール前の派手な仕事を期待される選手が、そこへ行く。いいじゃないか、そういうの。

しかも堂安は、試合の最初からピッチにいたわけではない。JFAの試合記録によれば出場は71分。終盤、日本は一人少なくなり、勝ち越し点もまだない。短い出場時間で、最後にこんな役回りが回ってくるとは。サッカー、たまに選手へ無茶な仕事を振りすぎる。[1]

ただ、ここを「堂安が上田を守った美談」だけにしても違う。上田自身も相手を押しのけている。守られて、ただ静かに立っていたわけじゃない。二人ともその場所から退かなかった、というほうが近い。[2]

最後に蹴るのは、上田だ

堂安を見ていたら、そのまま堂安の話だけで終えたくなる。でも最後にボールを蹴る人間は上田一人だ。周りをどれだけ仲間が囲んでも、その役だけは代われない。

同じ試合の49分、上田は伊東純也のクロスに合わせて同点ゴールを決めている。[1] あれは味方とつながって生まれたゴールだ。二点目のPKは、助走から先を引き受けるのが上田一人。しかもその直前まで、相手選手と押し合うほどの騒ぎになっていた。[2]

どちらが難しいかなんて決められない。ただ、二つのゴールの間にはずいぶん違う顔がある。伊東のボールに合わせる上田も、このざわつきのあとにPKを決める上田も、同じ試合にいた。

ここで「メンタルが鋼だから決めた」と言い切るのは簡単だ。でも上田が何を考えていたかは、本人にしかわからない。手元にある事実は、堂安とともに場所を守り、PKを決め、日本が勝ったこと。その並びだけで十分に熱い。

久保のプレーが見直されなければ、日本のPKという判定にはならなかった。堂安と上田がスポットを守らなければ、あの妙な小競り合いは別の形になっていたかもしれない。そして最後は、上田が決めなければ勝てない。[1][2]

三人に同じ手柄を配りたいわけじゃない。ゴールは上田のゴールだ。ただ、「誰のおかげで勝った?」を一人に絞ってしまうと、サッカーの美味しいところを自分から捨てる気がする。得点表に残る一人の名前と、その前に働いた人たち。両方知っているほうが、同じPKでもずっと面白い。

次は、シュート以外の堂安も

堂安の行動を得点欄には書けない。でも、点が生まれる前に彼がどこへ動いたかは残る。こんな小さな場所に、この試合の騒々しさが全部集まるとは思わなかった。

次に堂安を見るとき、シュートやアシストだけを待つのを少しやめてみたい。誰が困った場所にいるか、どこへ先に動くか。そこにも、あの選手の面白さが出る。もちろん次は、もっと普通にゴール前で暴れてくれていい。芝の警備まで毎試合頼むのは、さすがに業務過多だ。

10月1日にはエクアドル戦がある。[1] この日の騒ぎを、次の試合まで引っ張る必要はない。むしろ普通の展開で、堂安がどう味方に関わるのかを見たい。味方が走れば、どこへ顔を出すか。競り合いになれば、誰の横へ行くか。PKスポットで見えたものが一度きりの珍事だったのか、それともプレーのほかの場面にも出てくるのか。そこは、次を見てから考えればいい。

あのPKを決めたのは上田。その前に二人で守った場所ごと、覚えておきたい。

出典

  1. 日本サッカー協会「【Match Report】SAMURAI BLUE、上田選手の2ゴールでベネズエラ代表に逆転勝利」(2026年9月29日)https://www.jfa.jp/samuraiblue/news/00036832/
  2. ABEMA TIMES、上田綺世・堂安律とベネズエラ選手のPKスポットでの攻防を取材した記事(2026年9月29日)https://times.abema.tv/articles/-/10275612
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