三笘にリバプールの赤。
……いや、似合うだろ、それは。
まだ移籍は決まっていない。なのに、名前を聞いただけで勝手に着せてしまう。背中の名前まで入っている。正式なオファーを確認するより先に、こちらの脳内ではユニフォームが完成している。
こういうところ、本当にせっかちだ。
英メディアのTEAMtalkは10月2日、三笘の契約交渉が停滞しており、リバプールやトッテナムが動向を見ていると報じた。ただし、これは取材情報に基づく移籍報道。移籍先が決まったという発表ではない。TEAMtalkの元報道
ブライトンが2023年に発表した契約期間は2027年6月まで。延長せずに満了を迎えるなら、来夏には移籍金なしで移る可能性が出てくる。ブライトンの契約発表
ここまで読んで、頭の中ではもう三笘がリバプールの左を走っている。
で、急に冷静になる。
そのボール、ちゃんと三笘に来るんだろうな。
移籍先だけ、こっちで決めるのが早すぎる
リバプールに行ってほしい。いや、もっと試合に出られるところがいい。名門で勝負する三笘を見たい。でもベンチの三笘は見たくない。
勝手なことを言っているのは分かる。
世界でも大きなクラブの一つに行って、主力として出て、好きなだけ仕掛けて、ケガもせずに結果を出してほしい。書いてみると注文が多い。移籍の希望というより、三笘に全部やってもらう予定表になっている。
しかも、一番気持ちが盛り上がるのが移籍先の名前を聞いた瞬間だったりする。
リバプール。
それだけで、ちょっと声が出る。三笘があのクラブに、と想像するだけで楽しい。そこはもう隠さなくていいと思う。好きな選手に大きな舞台へ行ってほしい気持ちまで、冷静な分析で消したくはない。
ただ、移籍発表の日に大喜びしたあと、毎週スタメンを確認して、いない、今日もいない、となる未来はきつい。
ベンチに座っている姿を見たいわけではないのに、カメラがベンチを映した瞬間だけ三笘を探してしまう。そんな見方になったら、たぶん落ち着かない。試合を楽しむつもりが、出場を待つ時間になってしまうから。
三笘の何が好きだったんだっけ、と考える。
有名なクラブのユニフォームを着るところか。
違うだろ。そこも見たいけど、いちばんではない。
左でボールを持つ。相手が寄せる。そこから何か起こりそうで、急にほかのことがどうでもよくなる。あの時間が見たい。
移籍先の名前で喜んだくせに、結局はドリブルを待っている。
だったら、どこへ行くかと同じくらい、そこで三笘に何をさせる気なのかが気になる。左に置いておけば勝手に何とかする選手、という扱いでは困る。ボールが来なければ、あのドリブルも始まらない。
あのゴールの人を、ベンチで見たいわけがない
リバプールと三笘、で思い出すのは2023年1月のFAカップだ。
1―1で迎えた後半アディショナルタイム。三笘はゴール前で、ジョー・ゴメスが伸ばした足を越すようにボールを浮かせ、そこからボレーで決めた。ブライトンが2―1で勝ち、リバプールは敗退した。リバプール公式の試合記録
あそこで一回、浮かせる。
普通なら早く打ってくれと思う場面で、ひと手間入る。いや、そこでもう一個やるのかよ、と言いたくなる。でも、そのひと手間で相手の足を避けてしまう。
守る側からしたら、相当嫌だと思う。足を伸ばして止めにいったら、その足を越される。ちゃんと守ろうとしているのに、その努力まで利用されている感じがする。
しかも、時間が時間だ。余裕がある場面で披露する技ではない。ここで決めれば勝てる、外せばまだ分からない、というところでそれをやる。
あのゴールを思い返すと、三笘を「ビッグクラブに拾ってもらう選手」みたいに考えるのは、ちょっと変だなと思う。
そのビッグクラブを、実際に困らせてきた選手じゃないか。
もちろん、一つのゴールでどこでも通用すると決めるつもりはない。それでも、名門の名前が出た途端、三笘の側だけが試されるような話になるのは引っかかる。
使う側にも腕がいるだろう。
三笘が持ったら仕掛けるぞ、と相手が身構える。そのとき、味方がどこにいるか。近くに助けがあるのか、逆に誰かが相手を連れていってくれるのか。左に渡したから、あとはよろしく、ではいくら何でも丸投げだ。
移籍した直後は、三笘が新しいチームに合わせられるか、という見方になると思う。そこは当然だ。けど、チームのほうが三笘の良さを出せているかも見たい。
結果が出なければ選手の問題、出ればクラブの見る目があった、では使う側が得をしすぎている。
ブライトン公式が振り返る2024/25シーズンの三笘は、プレミアリーグで10ゴールを記録している。ブライトンでやってきたことまで、次のクラブへ行くための助走にしてしまうのはもったいない。ブライトン公式のシーズン振り返り
もう、とっくに面白いことをやっている。
その続きが、もっと面白くなる移籍だったらうれしい。名前だけ豪華になって、肝心の三笘を見る時間が減ったら、何のために浮かれたのか分からなくなる。
控えは嫌だ。でも、途中から出る三笘はちょっと怖い
ここまで、ベンチは嫌だ嫌だと書いておいて、少し考えが変わってきた。
途中から出てくる三笘は、それはそれで見たい。
たとえば、なかなか点が入らない試合で、後半に三笘が呼ばれる。まだ決められていない相手DFの前に、今から仕掛ける気満々の三笘が立つ。
相手にしたら、今ここで来るのか、と思うだろうな。これは勝手な想像だけど、そういう切り札として必要とされるなら、控えという言葉だけでがっかりする話でもない。
スタメン表に名前があると安心する。その気持ちはある。けれど、出ているだけでボールに触れない90分と、勝負を変えにいく30分なら、後者のほうを見たくなる日もあると思う。
ただし、毎回その30分がもらえる保証もない。途中から使う予定だったけど展開が変わった、今日は別の選手を入れた。そうなれば、結局は待って終わりだ。
だから、出場時間の長さだけでも決められないし、途中からなら負担が少なくて安心、とこちらで判断できる話でもない。
ブライトンは8月の公式記事で、三笘がハムストリングのケガによって前シーズン終盤と夏のワールドカップを欠場したことを記している。移籍の話を楽しむ一方で、この事実は気になる。ブライトン公式記事
大舞台で見たい。その前に、ちゃんとプレーする三笘を見たい。
何だか、最初に赤いユニフォームを着せていたときより、ずっと欲張りになっている。クラブ名だけでは満足できなくなった。どんな役割で呼ぶのか、どこでボールを渡すのか、試合が苦しいときに頼る気があるのかまで知りたくなる。
フリーで獲れる、という話にも同じことを感じる。
買う側にとって移籍金がかからないのは魅力だろう。でも、見ているこちらは安く獲れた選手を見たいわけではない。使い道があるから獲るのか、お得だから先に獲っておくのかでは、楽しみ方が全然違う。
来夏の話はまだ分からない。契約が延長される可能性もあるし、報じられたクラブへ行くとも限らない。
それでも、もしリバプールの選手として三笘が左でボールを持ったら、たぶん細かい心配はいったん忘れる。
いけ。仕掛けろ。そこ、抜いてくれ。
また一回浮かせたりしたら、もううるさいと思う。見ている側が。
赤いユニフォームが似合うかなんて、そのころにはどうでもよくなっているはずだ。相手DFが困り始めたら、こっちはそれどころではない。
移籍発表だけで終わらせないでくれ。
三笘が来たせいで、左側が面倒くさいことになった。そんな試合を見たい。
出典
- TEAMtalk/Fraser Fletcher(2026年10月2日):三笘の契約交渉と各クラブの関心に関する未確定の取材報道。
- ブライトン公式「Kaoru Mitoma signs new contract」(2023年10月20日):契約期間の発表。
- リバプール公式・ブライトン戦の試合記録(2023年1月29日):FAカップの結果と三笘の決勝点。
- ブライトン公式・2026/27シーズン記事(2026年8月21日):過去の成績と欠場理由。
